♥暴露

SS_エリー

※♡喘ぎをしている。
※また喧嘩してる。でもしょうもない喧嘩をしてほしいというか。前と同じ展開になってしまったけど、二人がワチャワチャしてるのしか書けない。イチャイチャは無理かも。


「あの……、人木さん。今日は、如何ですか?」
「何が?」
「その、今夜……しませんか」
「今からこれを見るから、今日は無理」
俺が指差した先には、バラエティ番組を映しているテレビがある。テレビの中では、司会者が軽快にその場を回し、ゲストや客席の笑いを取っていた。
「人木さん、前に私が誘った時も、その前も断ったじゃないですか!」
「そうだっけ〜?」
番組に視線を向け続けながら、上の空で返事をする。
「そうですよ!この前は腰の調子が良くないからと言って断りましたし、その前なんて眠いからという理由でしたよ!」
「え〜……?」
そんな事を言ったような気もする。思い出したといってもその程度だ。
「眠いって言った日については、寝ながらでいいならシてもいいって俺言わなかったっけ?」
「寝てる人木さん相手にスるのは、寂しいから嫌ですってその時に返したのを覚えていないんですね」
「え〜っと……」
自分の記憶を材料に攻めるのは、アンドロイド相手にはかなり悪手だったと後悔する。

「誘うのだって勇気がいるんですよ!体調に関する理由は致し方ないと思っていますが、テレビを見たいからと断るのは流石にひどいですよ!」
「でも今日一日、これを楽しみに仕事してたんだって」
「私だって、今日はしたいなって楽しみにしていたんですけど!」
ビジョンは俺の肩を掴むと、そのまま体を揺すってくる。画面が見づらくなり、鬱陶しいと払い退ける。
「あ〜もう、分かったって。これを見終わったら相手してあげるから」
「……人木さんはあくまで、私の方を後回しにするんですね」
ビジョンがそう言うと、テレビの画面が突然何も映さなくなる。リモコンに手が触れたという事もなく、唐突だった。
「えっ、何、テレビ壊れた!?」
慌ててリモコンを手に取り、電源ボタンを押す。テレビは先程と変わらず、笑い声の絶えないバラエティ番組を映し出す。
「はあ、ビビった……」
安心するのも束の間、再びテレビの画面がぶつりと消える。流石に何か意図的なものを感じ、ビジョンの方を見た。
「これ、お前がやってる……?」
「……」
ビジョンはというと、何も答えず不貞腐れたように、露骨に顔を逸らした。向こうに返事をする気が無いのであればと再度リモコンからテレビの電源を点けるが、同じ事を繰り返すように即座に消えた。
「お前さあ!いい加減にしろよ!」
「人木さんこそ、いい加減にしてください!テレビ番組なら、録画するなり配信されたものを後で見ればいいじゃないですか!」
「こちとらテレビの時間に合わせて風呂も入ったんだって!」
「そんなにテレビが見たいなら、私が見せてあげますよ!」
「えっ?何。結局これ見てていいの?」
「そういう意味じゃありません!」
ビジョンは勢いよく立ち上がると、真っ直ぐテレビに向かって歩き出す。
「今すぐに人木さんがテレビを見るのをやめると言うのであれば、許してあげてもいいです。ただし、そうしないのなら人木さんの恥ずかしい場面をこれから流すことになりますよ?」
ビジョンがテレビの液晶に触れると、画面にノイズが走り、映像が少しずつ変化していく。彼がハッキングで操作しているのだろう。

(面倒臭え〜〜……)
「いいよ別に。好きにしろよ」
どうせビジョンはハッキングでテレビの電源を消し放題なのだ。それならいっそ、恥ずかしい場面とやらを披露させた方が話が早い。
それに、俺の情けない記録を見せつける行為は、以前喧嘩をした際にもしてきた事がある。俺が足の小指を打ち付けて悶絶していた時であったり、クセの強すぎる寝癖が出来て嘆いていた時だったり。持ち出されたところで、情けないものは情けないが、別に大したダメージを受けるものではなかった。
出てくる映像の内容が余りにもしょうもなさすぎたために、喧嘩をする気力が削がれてその場は俺が謝ったような気がする。これを、ビジョンは成功体験としてしまったのだろう。

「人木さんの方から謝るまで、絶対に止めませんから」
「もう分かったから、とっとと流してチャンネルを元に戻してくれよ」
「……」
ビジョンがこちらを睨みつけると、ぱっと画面が切り替わる。

「は?」

テレビの液晶には、肌色が映っていた。
正確に言うと、布団に寝転がった全裸の男が、画面いっぱいに映し出されている。理解が追いつくと共に、男はどのように見ても俺自身であるように思えた。

“人木さん、痛くないですか?”
画面からビジョンの声がする。
“……ッ、はぁっ…………、平気……っ”
どう見てもこれは。
どう見てもこれは!

「お前、馬鹿じゃねえの!!!!?」
「なんでテレビにこんな、シてる最中の映像を流してんだよ!!?」
ビジョンの記録というのは、詰まるところ彼視点だ。という事はこれから流されるものは全て……

“あぁ……っ、気持ちいいっ……♡”
“ふふ、今日の人木さんは本当に大胆ですね”
“なあビジョン、もっと奥突いてほしいっ……”
“おねだりが上手ですね。……こうですか?”
“そこっ、そこ……♡イイ……っ♡アっ♡”

「〜〜〜〜〜っ!!!!!」
画面の中の俺は、恐らくビジョンの律動に合わせて身体を上下に揺らしながら、恥も外聞も気にせずにあんあん喘いでいる。

「何だよ……、これ……?」
ビジョンとセックスをする際に、たまにだが自分が挿れられる役割をする時もある。そういった場合に、気の緩みから普段は言わないような内容を漏らしてしまう事もあるにはあるが、ここまで大々的にお披露目した記憶は全く無い。

“ビジョンっ♡なあ、キスしてほしい……っ”
これは不味い。本当に知らない。こんな恐ろしい事を言った記憶は何処にも無い。
「おいビジョン!呑気に見てねえで早く止めろや!!」
「事前に伝えた事を、もう忘れてしまったんですか?」
俺が謝るまで映像は止めない。確かにそう言っていたが!

“は……、アァ……っ♡胸っ、触んないでぇっ……♡”
「……」
“あッ……、ンっ♡気持ち良いッ♡ビジョンの気持ちいいよぉ♡”
「…………」

“イくっ……、イくぅ……っ♡、あッ……♡”
「本当に申し訳ございません!!!!!」
「ビジョンさんお願いします!!!!!これ以上は!!本当に!!勘弁してください!!!!!」
慌てて声を張り上げて謝罪したために、自分自身が果てる様子と向き合う事はせずに済む。

「……少しは、反省していただけましたか?」
「しました!!しましたので!!」
「もうこれ以上、無様な痴態を晒すのはどうか勘弁してください!!!!!」
「……」
画面の中の俺の動きがぴたりと止まる。
「はぁ〜……。良かった……」
どうせなら一時停止でなく、再生自体を停止してほしかったが、聞くに耐えない喘ぎ声が止まっただけでも良しとする。

「……あのさ、これって、実際にあった事?」
「……どういう事ですか?」
「いや、あの。俺が挿れられる方でスる時もあるけど、俺はあんな風に喘ぎまくるとか絶対にしないし」
(顔も極力見せたくないのに、映像の俺には隠す素振りも無かった)
「本当にあった事なのかなあって……」

「私の記録を疑っているんですか?」
「う、疑っているというか……。俺の方は、全く心当たりが無いんだって……」

「やっぱり、覚えていないんですね」
ビジョンは大きなため息をつく。
「一ヶ月前、飲み会から帰ってきたと思ったら、人木さんにしては珍しく、陽気にはっちゃけて酔っ払っていたんです」
(はっちゃけてって、なんだよ)

一ヶ月前。確かに飲み会があった気もする。翌日が休日だからと、羽目を外して久しぶりにアルコールを摂取し、そのせっかくの休日を二日酔いでふいにした飲み会の日がまさかこの場面なのか。
「そもそもスる事になったのも、人木さんの方から積極的に誘ってきたんですよ。いつもと違って、慣らすのだって素直にさせてくれましたし。あーあ、あの時の人木さんは良かったなあ……」
「あ〜〜っ!知らねえもんは知らねえんだって!」
「なら、教えてあげますよ!これは生成されたものなどではなく、本当にあった事なんです!」
途端、静止していた画面が、再び動きを見せ始める。

“はぁっ……、はっ、はーっ……はーっ……”
達した後の、荒い呼吸音がリビングに響き始める。
「いやお前!ちょっ、せっかく止めたのに!」
「見続ければ、人木さんも多少は思い出すんじゃないですか!?」
「無茶言うなよ!本当になんも覚えてねえんだって!」
「なら尚更ですよ!」

画面の中の俺はというと、息を整える間も空けずにゆっくりと起き上がる。
“ビジョン、お前なら、すぐにまたいけるよな……?”
“えっ?” 
“なあ、次、座ってしたい。ひっつけるの、嬉しいから……。抱きしめてほしい……”
“人木さん、ご要望には必ず応えますから。一回休憩しましょう、顔が真っ赤ですよ。私、お水持ってきますから”
“いいから、早くほしい。俺が抱いてもらうには、面倒くせえ準備がいるもん……。せっかくだから、いっぱいしたい……”
画面の中の俺は、制止を聞かずにのろのろとした動きでビジョンに跨る。自らの手で彼の陰茎を後孔に当てがうと、そのままゆっくりと押し挿れていく。

“ゔぅっ……、ビジョンの、入ってくぅ……♡アッ……♡”

「〜〜っ!!!!!」
もう誰かこいつを殴ってでも止めてほしい。いや、出来ることなら俺が殴っている。もう液晶ごと殴ってしまおうか、という選択肢すら頭に浮かんでくるが、テレビを勢いで壊したくはない。

「知らない……。知らない……。俺は何にも覚えてないし……」
頭を抱え、現実逃避のためにも必死で自分に言い聞かせる。しかしその姿はビジョンの癇に障ったのか、彼が声を張り上げる。
「こういう事も、いつもそうじゃないですか!私は何もかも全部鮮明に覚えているのに、人木さんは忘れちゃうんですから……!」
「……」
ビジョンが悲痛な叫びを漏らす。その声色に心が痛まない訳ではないが、こちらは本当に画面の中の惨状をちっとも覚えていないのだ。責め立てられても、心が伴った謝罪が出来る気は一切せず、ただ下を向き押し黙っていた。

“ビジョン……好き……”

重苦しい空気を破ったのは、甘ったるい熱を帯びた、掠れた声だった。

“好き……っ♡あッ、ビジョンのこと、大好きっ♡いつもは、言えないからッ……”
“信じてもらえないだろうけど、ほんとに好きッ♡本当にっ……”

(誰かこいつの息の根を今直ぐに止めてくれ〜〜〜〜〜!!!!!)
もう画面を直視する気力はいよいよ消滅した。ソファに項垂れ、顔をめり込ませる勢いで埋める。しかし、艶めいた息遣いも、肌と肌とを打ち付ける乾いた音も、うわごとのように吐き出す好意も、全てが筒抜けて自分の耳に届いてしまう。

“ねえ、好きッ♡すごい好き♡ビジョン……”
“あぁっ、お前のこと、好きだから……っ♡んンッ……”
“すきだよ……。すき、すきぃ……っ♡”

“あの。人木さん、あの、わかりました、分かりましたから……”
“貴方が私を好きだという事は、メモリが吹き飛びそうになる程よく分かりましたから……”

「ん……っ♡はっ、……んっ、はぁっ……」

おそらくは口で口を塞ぐ事にしたのだろう。
深いものを連想させる息継ぎと、水音がした。
現実の俺はというと、もうあの馬鹿をこの手で殺せないのであれば、いっそ今直ぐにでも俺を殺してくれと途方に暮れ始めていた。

ぷつん。

突如、淫らな映像を垂れ流し続けていたテレビが沈黙する。恐る恐る顔を上げれば、画面は肌色ではなく真っ暗になっている。永遠のようにも感じた、拷問のような時間は唐突に幕を閉じた。

「……まあ、もういいでしょう」
先程と比べると、明らかにビジョンの声から怒気が消えていた。恐らくだが彼の方も、矢継ぎ早に続いた間抜けな嬌声に、毒気を抜かれたようだった。

「…………」

何を言ったものか分からず、互いに沈黙し、リビングは静まり返る。
「……人木さん、テレビ、見なくていいんですか」
「いや、なんかもういいかな……」
「…………」

正直、目も当てられない映像だったが、濡れ場であったのは間違いない。自身の下半身は反応し、僅かに持ち上がってしまっていた。

「……」
ビジョンの方も、何処となくそわそわし、落ち着かない様子に見える。股間を隠すように手を乗せ、肩を縮こませて座っている様子はくつろぎから程遠い。
「……もしかしてお前、勃ってる?」
「えっ……!い、いや、その、人木さん。私の方から見せたんですよ。それなのに勃つなんて、そ、そんな……」
(勃ってるんだな)
露骨に動揺し始め、目をキョロキョロさせながら言われても、肯定の意味にしか思えなかった。
「む、むしろ、そんな事を聞く人木さんの方が勃ってしまったんじゃないですか?」
「……そうだね。だから、抜いてくるわ」
「えっ……、ひ、人木さん……」
墓穴を掘ってしまった、とビジョンはあからさまに狼狽えた様子だが、こちらとしては悪趣味な鑑賞会の仕返しや、腹いせの意図は全く無かった。
「……お前さ、抱かれたいのなら、ちゃんとお前が抱かれてる方の映像にしてくれよ」
ビジョンに突かれ、快感に思い切り喘ぐ画面の中の自分を、羨ましいと思ってしまった。同じようにされたいと思う自分を認めてしまった以上、今日はもうビジョンの望みに応えられる気はしなかった。

「人木さんは、私に抱いてほしくなってしまったんですか?」
「……まあ、そうだね。お前の選択ミスでもあるし、今日はもう見逃してくんない?」
「なら、単純に私が人木さんを抱けばいい話なんじゃないですか」
「え?」

「私はただ気持ち良くなりたい訳ではなくて、貴方とだからそういう行為をしたいんですよ」
そう言うと、ビジョンはそっと俺の頬に触れる。
顔が熱くなっているのが、自分でも分かる。アルコールのせい、という言い訳は今日は使えない。

「……俺も、そうだよ」

自分の熱を、押し付けるようにビジョンに身を寄せると、彼も同じ状態なのだと感触が伝わった。

「抱いてほしいなんて思うの、お前にだけだよ」

今日の自分は素面であるのに、何処か甘ったるい酔いに溺れて、口が軽くなっている気がする。しかし、たまには欲のままにビジョンを求めてもいいのではと気付かないふりをし、ただ彼が欲しいという衝動のままに、顔を近づけたのだった。


※翌日、人木は滅茶苦茶後悔する。
※人木が受けになると、解すやら慣らす場面を書くのが怠くなったのでこういうシチュになった。そしてそのためにまたビジョン君を怒らせる事になった。すまない。
※いろんな壁打ちを参考にした。壁打ち有難い。

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