※R18 まだ性行為して一ヶ月くらいの海ビ。ピュアセックスを目指した(? ビジョンくん視点
「人木さん、今日しませんか」
夕飯の後、ソファでくつろいでいる人木さんの腕に軽く寄りかかりながら、私は直球勝負に出た。
「えっ、良いけど……」
前に遠回しに言った時は伝わらず、ドキドキとベッドに横たわっている私の隣で人木さんは眠ってしまった。なので、今度こそは直接的に伝わる言い方にしようと勇気を振り絞ったのだ。しかし、人木さんは意図の読めない顔をしている。
「あの、本当は嫌ですか…?」
「ビジョンさんから誘われたのって……一番初めのとき以来だからちょっとびっくりした」
確かに人木さんと初めてそういうことをするようになって一ヶ月半ほど経つが、誘うのは決まって人木さんの方からだった。
「なんとなくそれっぽい雰囲気になってとか、俺がシても良い?って聞いてからだったからさ……ビジョンさんはどう思ってんのかなあって」
人木さんは声のトーンを一つ落とし、重いため息のように呟いた。
「実は俺としたくないとか……」
「そんなことないです!!!!!!!!!」
つい大きな声を出して全力で否定してしまった。お隣さんまで響くような声量に流石の人木さんもびっくりしてむしろ呆けている。
「あっ……すみません」
「そ、そんなに否定されるんだ……まあ、嬉しいよ」
雰囲気を壊してしまったと焦ったが、人木さんは口元を緩めてくれた。照れ隠しに一つ咳払いをし、俯いていると人木さんに手を取られる。
「じゃあ、シャワー浴びたらしようか。ビジョンさんから、入ってきて良いよ」
ぎゅっと手を握られて微笑まれるとどきりとしてしまって、落ち着かなくなる。アンドロイドである自分がこんな気持ちになるとは思わなった。
人木さんと恋人になってから、ドキドキしたり、幸せな気持ちを感じる時もあれば、離れていると寂しさが募って切なくなることもある。きっと、アンドロイドではなかなか味わえない感情を人木さんにもらっているのだと思う。
シャワーを浴びた後、ベッドで一人で待つ時間はいつもそわそわとして、用意してあった本もまともに読めずにぼうっと天井を眺める。もちろん初めての行為ではないが。この先を知っているはずなのにまだ慣れる気がしない。
「ビジョンさん」
「わっ」
ぽん、と肩を叩かれ大袈裟に驚いてしまう。考え事をして注意を払っていなかったため、人木さんの接近に気づかなかった。髪を下ろした人木さんが不思議そうに首を傾げている。
「今日はちゃんと髪乾かしてます?」
私は誤魔化すように人木さんの毛髪を触り、コンディショナーで柔らかくなった毛先を確かめた。
「うん……前みたいにビジョンさんに乾かされるとスる気にならなそうだし……」
そういえば、人木さんの髪が生乾きなのが気になり、風邪を引いてしまうとドライヤーで乾かしたことがあった。その後、スることはしたのだが、なんだかぎこちなかったのはそれが理由だったのかと今更理解する。
「す、すみません」
「まあでも、嫌だったわけじゃないから」
人木さんがそっと私の頬に触れてくる。輪郭を優しくなぞる彼の指先に、感じるはずのないむず痒さのようなものを覚える。キスしたいな。そう思考するよりも先に、人木さんの唇を奪っていた。
「ん……んむ……ぁ」
唇を重ね合わせるだけではもう物足りない。おそるおそる人木さんの口内に舌を伸ばし、深い口付けをする。
「はっ……ふぅっ、んっ……!んむっ……」
人木さんにされたことを思い出しながら、見よう見まねで舌を絡めようとしたが、差し込んだ舌は簡単に絡めとられてしまった。ぐちゅぐちゅと唾液がかき混ぜられる音が口蓋に響いて恥ずかしくなる。もう少し上手くリードしたかったが、結局は経験がある相手の方がまだまだ上手だ。
「はあっ……あっ……」
快楽に蕩けて腰が砕けそうになり、後ろにのけぞった私の腰に人木さんが腕を回す。人木さんはそのまま私をゆっくりとベッドに押し倒して、口角を上げた。
「キス、上手くなったんじゃない?」
たとえ褒め言葉だったとしても、挑撥されているような気がしてむっとしてしまう。まだキスだけしかしてないのに腰砕けになるなんて。口の中の甘ったるい熱が忘れられなくて、意地になって人木さんの唇に噛み付く勢いで接吻する。
侵入してきた人木さんの舌に舌裏をなぞられる。熱いものが混じり合い、擦り付け合い、それだけで生き物同士の交尾のような動きで、喉奥まで犯されているような錯覚に陥る。
「ふっ……はぅ……んぅ、っふ……はぁ、はあっ…………」
耐えきれず唇を離すと、息の上がっている人木さんがいた。気がついたら長めの口付けになっていたようだ。
「っはあ……なんとか、息、続いた……」
人木さんの頬は紅潮しており、唇の表面は唾液でてらついている。
「私だって、もう、初めての頃とは違うんですよ」
「へー、本当かな」
人木さんは意地悪そうに笑い、楽しそうに私の服を脱がし始めた。あっという間にシャツとスラックスは脱がされ、人工の肌をなぞられる。人木さんの硬い手のひらが脇腹をなぞり、ゾクゾクと痺れるような感覚に襲われる。
「んっ……ふぅ……っ」
「ビジョンさんの好きなところ、もっと触ろうか?」
「あっ……じゃあ」
人木さんの腕を掴み、自らの頭の上に導くと人木さんは拍子抜けしたのか一瞬呆けた顔になる。
「えっ、ここ……?」
「人木さんに、頭撫でてもらうの好きで……ダメでしょうか?」
「ダメ……じゃないけどさ」
人木さんが作りものの毛髪を掻き分け、子供にするように優しく頭を撫でてくれた。幸福感に包まれ、思わず口元が緩んでしまう。人木さんは疑問に思うのか、眉をひそめながらも撫で続けていた。
「これで良いんでしょうか……」
「えへへ……嬉しいです。人木さんの手が、好きなので」
そう言うと人木さんは口を窄めて、諦めたように気の抜けた声で言った。
「ビジョンさんが良いなら……まあいっか……」
「?」
人木さんは独りごちていたが、気を悪くしたわけではなさそうだった。人木さんにこのまま撫でてもらうのも心地良いが、そろそろまた先に進みたい。きっと人木さんにも我慢させてしまっているはずだ。
「ありがとうございます。今度は私が人木さんを喜ばせても良いでしょうか」
「わっ、ビジョンさん!?」
スラックス越しに人木さんの下半身に触れる。彼が留めていた熱を感じて、緊張しながらも彼のモノを取り出した。
「ちょっといきなりすぎやしません……?」
「でも、苦しそうに見えたので……」
手のひらの中でびくびくと脈打つそれを両手で包み込むと、人木さんは吐息を漏らす。別の生き物のようなそれと向き合っているとじっとこちらを期待するような気配を感じ、ゆっくりと刺激してみることにした。
「……っは」
短く熱っぽい息を吐き、彼の眉間に皺が寄る。快感を耐える人木さんの表情を見上げて、不慣れながらも先っぽを親指の腹で擦ってみると人木さんは低い唸り声のような声を漏らす。拙い動作だが人木さんが気持ち良くなって欲しい一心で指先を擦り込む。
「っ、ビジョン、もういいから」
このまま出した方が楽なはずなのに、なぜか制止され私は戸惑った。何か手順を誤っただどうか。それとも単純に気持ち良くなかったのだとしたらと考えると不安になる。
「このままされると、その、出ちゃうので……ごめん」
「わっ」
突然押し倒され、両足を顔の方に折り曲げられる。人木さんに後ろを曝け出すような体勢になり、羞恥に喚く間もなく秘孔に指を入れられる。
「あっ……はあぁ……っ」
まだ浅い部分をトントンと一定のリズムで叩かれるように動かされているだけなのに、もどかしかしい快感から逃れるように声が漏れてしまう。我ながら敏感に設定しすぎただろうか。恥ずかしいはずなのに気持ち良い。この感情は何なのか、該当する感情が見つからずただひたすらに困惑する。
「ううっ、あっ……人木、さ……んっ、ほぐさっ……なくてもっ……入っ…あっ、うぁっ」
「ビジョンが、気持ち良さそうなの見たいから」
余裕のなさを感じさせない微笑みに、自分と人木さんの経験の差を感じて切なくなるが中を刺激され、すぐ熱に流されそうになる。もう一本指が入り奥へと進み、中を押し広げられるとたまらず喘ぎながらのけぞってしまった。
「あっ……!あぁっ、うぅ……ひ、とき、っさん……」
彼のシャツを掴み、じっと快楽に耐えるしかない自分が情けなくて、気持ち良くて、でも少し悔しくて。ぐるぐるとさまざまな感情に飲み込まれそうになりながら、目の前の人に縋り付いてしまう。
「もうそろそろ、挿れるから」
指が引き抜かれるのが名残惜しくて、余計に後孔に力が入り彼の指を締めるがゆっくりと体内から出ていってしまう。
「あっ……」
彼の張り詰めた先端が後ろに当てがわれ、くちゅりと湿った音が聞こえた。
「入れて、ほしいです……早く」
無意識に彼を求める言葉が口から出て、もはや恥じ入るような気持ちもなく一刻も早く彼と繋がりたくてたまらない。
「なるべく、優しくするから」
「っ……! あっ、あぁっ……!」
人木さんの熱が中に入ってきた瞬間に、初めて人木さんと繋がったときのことを思い出す。機械である自分にとっては、「思い出す」というよりまるでリプレイのように再生するような感覚に近いかもしれない。それでも、感覚としてその時に体験した痛みのような快楽を、人木さんの肌の匂いを、データではない実感としてまるで人間のように感じたいと思っているのかもしれない。
「はぁっ、あっ、……んっ、あぁっ!」
輸送が繰り返され、波に揺さぶられる小舟のように私は彼に身を全て任せ、激流のような熱をスキン越しに浴びる。彼の質量が中で増していき、的確に奥の“良い”ところを突くのがたまらない。
「ビジョン……っ、はっ……」
人木さんが情欲に浮かされて、掠れた声で私の名前を切なげに呼ぶのが好きだ。腰に添えられるように柔く掴まれている手を、私がぎゅっと握ると彼は驚いたのか動きを止める。
「人木さん……我慢、してないですか?」
「それは……」
人木さんの目が逸らされ、観念したように打ち明けられる。
「まあ、少しだけ……かな。ビジョンが思ってるよりは辛くないよ」
「そうじゃなくて」
上半身を起こして人木さんの唇にキスをする。舌を入れて、わざと水音が響くようにやらしく、深く口づけた。口を離してお互いに見つめ合う視線の間には、唾液の糸が引かれ、銀糸のようにきらりと光る。
「優しくするより、人木さんの好きなようにして欲しいんです」
普段の思考であればためらうような言葉も、理性を捨て去り蕩きった電脳では羞恥心すら湧かない。
「えっと、それは……?」
「……あるがままの人木さんに求められたいんです。その、激しくても良いから……」
人木さんの首筋に唇を寄せ、紅い痕がつくほどのキスをする。彼を抱き寄せて、両足で背中を抱き抱えるように密着し、より深く繋がるための体勢になった。
「もっともっと、たくさん繋がりたい。あなたと」
今までのセックスでは、きっと私は人木さんにリードされっぱなしだったと思う。人木さんは私を気遣ってくれたし、気持ち良くしようとしてくれた。でも、私も人木さんにもっと気持ちが良いと感じて欲しい。
「……俺も、嘘じゃなくて、ちゃんと気持ち良いよ」
人木さんが笑う顔は切なげにも満足げにも見える。最中に向けてくれる微笑みの甘やかさに、自然とこちらも口角が上がった。自分がうまく笑えているのか、自信がない。
「でも、ビジョンがもっと俺を求めてくれるなら、それは嬉しい」
「あっ……!」
人木さんがさらに体内の奥深くへと入っていき、苦しさに似た快楽で胸が詰まるような心地になった。肌と肌がぶつかり合う乾いた音と、奥を貫く動きがどんどん速くなっていく。
「あぅっ、あっ、はあっ……!ぅ、あっ、ああっ!」
今まで経験したことないほど激しく腰を打ち付けられ、何度も人木さんのモノが奥の快楽を得るためのスポットを壊れそうなほど叩く。
「人木さんっ、ひと、きさんっ……あっ、はぁっ!」
人木さんはただ歯を食いしばりながら自分を見つめ、快楽の熱を高めている。額に浮かんだ汗を拭いたくて手を伸ばし、彼の頬を両手で包み込んだ。
「海斗、さん」
下の名前を呼んでそのまま口付けをする。情動的に名前を呼んでしまったことの羞恥心なのか、それよりもよっぽど恥ずかしいことをしてるくせに、それを誤魔化すように深く唇を喰んでいく。
「んむ……ふぅっ、はあっ、かいと、さん……海斗さん…」
キスの合間に溢れ出した言葉が止まらなくて、愛しさで胸がいっぱいになる。もうすぐ限界だ。
「んっ……むっ、はっ、海斗さんっ、もう、イきそ……っ!」
「ん……、一緒に、ね」
「ひぃ……っ!? あっ、ふあぁっ!?」
お互いの腹の間で反り上がっていた私のモノを不意に掴まれ、扱かれるとたまらず悲鳴のような喘ぎ声をあげてしまう。もうすでに頂上が近いのか、視界がチカチカと軽く点滅するような感覚に襲われ、解放の瞬間に上り詰めていく。
「はっ……ビジョン……っ!」
「あっ、はぁっ………!あぁーっ………!」
迸っていく熱に二人して溶け合い、自身の体温すら見分けのつかないくらい抱き合って、絶頂の快感に耐える。人木さんの吐息が、心音が、肌が擦り付く音すら聞こえて、無意識に彼の背中に爪を立てた。
「はあっ……はあっ……ビジョンさん」
人木さんは額に張り付いた前髪を拭い、ぬるま湯に浸かっているような法悦の余韻にまどろんでいる私の頬を撫でた。ゆっくりと人木さんのモノが引き抜かれ、思わず後孔を引き締めると中に注がれた精液が臀部を伝った。
「ぁ……ぅ……ひと、きさん。人木さん……」
頬に添えられたままの手のひらに私は擦り寄ってキスをする。甘えるように彼に視線を向けると、なぜか人木さんは瞳を逸らした。
「好きです……あなたが、すき……」
「うん、わかった。わかったからさ」
人木さんの手のひらは頭に移動し、グシャグシャと頭髪をかき乱される。
「もっと、キスしたかったのに」
「……これ以上シたくなったら困るから」
「シても良いのに」
「そういうことを言わない!!」
勢いよく布団を被され、無理やり終わりの雰囲気にされる。そんなにダメなのでしょうかと、密かに布団の中で不貞腐れた。
「……でも、人木さんが大切にしてくれてることもちゃんとわかってますよ」
隣で寝そべりながら熱を冷ます人木さんの首筋に、リップ音が響くようにキスをする。
「はあ、もう……」
ため息をつきながらも、人木さんの耳が紅に染まっているのは情事のあとの熱が引かないせいか、再び灯った熱なのかはわからない。人木さんが身を清めようとしだす前に、彼の腕を抱き寄せる。
愛しくて愛しくて。
私の全てをあげるからあなたの全部を私のものにしたいです。
アンドロイドには過ぎた臨みばかりが浮かんでしまう。人の役に立つために生まれた存在のはずなのに、こんなにわがままで良いのだろうか。
「今度は、私が人木さんを抱いてみたいです……」
「……はい!?」
素っ頓狂な声とともに振り返った人木さんに、私はとびきりの微笑んでみせたのだった。
