【ビ海】夕食

SS_蓮根

夕飯後の皿洗いをしていると、ビジョンがひょっこり俺を覗き込む。そのまま軽く腕に寄り添うように触れ、洗った食器の一枚を手に取った。
「明日は何が良いですか?」
皿の水滴を布巾で拭き取りながらビジョンは言う。
ビジョンと同棲し始めてから、よく晩飯の献立を聞かれることが多くなった気がする。
「ハンバーグとか?」
「今週のタンパク質摂取量が過剰になるのでダメです」
「じゃあフライドポテト」
「カロリーが高くなるのでダメです」
「じゃあ何なら良いの!?」
聞いた意味あるのか?とツッコミたくなった。幸い手元は狂わず、洗っている食器は無事だが調子を崩されている気がする。付き合っても、アンドロイドらしいところはある程度はそのままだ。人間なので多少は容赦してほしいよ。
「ごめんなさい、でもなるべく人木さんの健康を気遣いつつ要望を叶えられたらと思って……」
子犬のような瞳を向けられしょんぼりするビジョンにぐ、と言葉がつまる。作ってもらっている以上、あまり強くは出れない。
「俺はなんでも食べるけどさ、甘いやつ以外は……」
妥協しつつも、たまには彼の目を誤魔化して羽目を外しつつバランスを取るしかないか、うん。いつかビジョンさんが匙加減をわかってくれるといいけれど。
アンドロイドのスキンのように、ピカピカに磨かれた食器がビジョンによってラックに収まっていく。
「ビジョンさんに料理してもらってばっかで悪いね」
「人木さんのことを思って作る時が1番楽しいですから」
愛されてるのかなと、思って嬉しさに少し頬が緩む。
「何笑ってるんですか」
嬉しそうにはにかみながらビジョンは揶揄するような睦言を言う。そのまま思ったことを素直に言うと馬鹿正直にアンドロイドは答えた。
「愛されてますよ、あなたは十分」
証明してあげます、と歯の浮くような台詞を吐いたビジョンはいとも簡単に俺の耳に口付ける。
そして後日、ビジョンに押し倒されて自分がまな板の上の鯛だったと知るのである。