♥足蹴

SS_エリー

※スるようになってだいぶ経つ。


「ふわぁ……」
一つ、大きな欠伸をする。ベッドの上で何をする気にもなれず寝転がっていれば、眠気と共に、欠伸の回数も増えていく。
今現在、ビジョンからの夜のお誘いをOKしたために、彼のシャワー待ちをしている所だった。日中の疲れもあるが、何より眠かったために断ろうかと最初は考えた。しかし、前回の最中にあるやらかしをしてしまったため、仕方なしに了承したのだった。そして今も、眠気が覚める事はなく、布団の心地良さがさらに眠りへと誘惑してくる。

「人木さん」

はっと目を覚ました。どうやら一瞬寝てしまっていたらしい。身体を起こすと、ビジョンは丁度ベッドへと腰掛ける所だった。寝ていたのが彼に気づかれているかは、分からなかった。
「うん……」
突然覚醒させられた頭は、まだ半分眠りにも浸かっている気がする。
(もう今日は手早く済ませよう。)
そう思いながらビジョンの頬に手を添え、触れるだけのキスをする。

いつもならこのまま舌を入れているが、なんとなくすぐに顔を離した。ビジョンが物欲しそうに見てきた気もするが、首筋に唇を寄せながらシャツのボタンを外しにかかる。
ビジョンはボタンの付いた服を着ている事が多い。正直言って、今だけに限らず一つ一つ外していくのが面倒だった。はあ、と思わずため息が漏れる。
シャツの前をはだけさせると、無駄のない引き締まった身体が露わになる。アンドロイドは体型を気にする事も無いのだろうなと思うと妬ましい。首筋から鎖骨に唇を滑らせ、軽く吸い付くとビジョンはぴくりと反応した。しかし、よくよく考えればキスマークが付く事は無いのだから、今日はこれももう省略していいのではと思った。
掌を胸元から鳩尾、そして腹部へと滑らせながらそのままビジョンを布団の上へと押し倒す。いいな、俺もそうしたい。そう思いながら、先程手でなぞっていった箇所にキスをしていく。
「あの…… 人木さん……?」
「何?」
ビジョンは、いつもとは明らかに異なる前戯に疑問を抱いてるのだろう。しかし、指摘するのは憚られたのか、「いえ……」と言葉を飲み込んだようだった。

いつも通り事に及ぶと、どうしても一時間程度はかかってしまう。もうここまで回数を重ね、特別ではなく生活の延長となった今、そこまで時間をかけるつもりはさらさらなかった。

膨らみも、柔らかさもない平坦な胸の突起をこねるようにつまむ。
「んっ……、あっ……」
ビジョンの口から、艶を帯びた声が漏れ始める。ビジョンは胸を弄られるのが好きだ。他の前戯をおざなりにしても、ここをいつも通りにしておけば、とりあえず文句は言われないだろう。爪で優しくかき、指の腹で潰し、指で挟み込んでは、擦り合わせて弄ぶ。
「はぁ……っ、ん……ッ」
片手で胸を責め続けたまま、空いた片方の突起に赤子のように吸い付く。
「あぁ……ッ!」
ビジョンが悲鳴に近い声を上げた。続けて形を縁取るように舌を転がすと、快感からか身を捩られる。硬い感触が身体に触れ、ビジョンのモノが存在を主張し始めている事に気が付いた。

(眠い……)
ビジョンが盛り上がっている一方で、頭がぼんやり霞みがかっていき、どんどん冷静になっていく己を自覚した。
(このままだと乳首をしゃぶったまま寝る。)
それを避けるためにも、もう挿れてしまおうと自身の下を見やる。
しかし性よりも、睡眠の方に欲の天秤が傾いているからなのか、下半身はほとんど反応を示していなかった。

「ビジョン」
「はい?」
「挿れるから、勃たせてくれない?」
「えっ……」
「今のまんまじゃ挿れらんないし」
「……勃たせるのは構いませんが、今日の人木さん、明らかに進行を急いでいませんか?」
「……まあ」
元よりそのつもりで進めてきたため、素直に肯定する事にした。
「今日はもう本当に眠くてさ。正直早く終わらせて寝たい」
「……でも人木さん、前回も寝落ちしたじゃないですか」
「うっ」
ビジョンがじとりとこちらを睨んでくる。
そう、前回も今日と同じように眠気を纏ったまま事に及んでいたのだが、ビジョンの透明な腹部が冷たくて気持ち良いと顔を寄せ、気がついたら朝になっていた。いくら声をかけても起きなかったので、途中でもう起こすのを諦めた。とビジョンに呆れられ、次は最後までするからと謝った記憶も確かにある。
「さっきも寝かけていましたし。私が声をかけたから起きたでしょう」
ここまでツッコまれなかったので、気づいていないのかと思いきやバレていたようだ。
「いや、悪いとは思ってるよ。でもこっちだって、今日も眠いのは狙った訳じゃないんだって」
「……私の誘うタイミングが悪いって言いたいんですか」
「違う!そうじゃねえって!」

「……実際さあ、この先ずっとセックスの度に毎回毎回丁寧な前戯をするのは無理だし、こっちとしてもしんどいって」
「サクッと済ませて、サクッと終わる日があってもいいじゃん別に」
「……」
ビジョンが静かに口を開く。

「……分かりました。人木さんのを勃たせればいいんですね」
「うん、頼むよ」
そう答えた次の瞬間、ずしりと股間に衝撃が加えられる。
「え?」
何事かとビジョンを見たが、彼は両手を一切動かしていない。慌てて下に視線を移すと、伸ばされた彼の足が股間に乗せられ、上から圧をかけてくる。
「いやお前、何してんの!?」
「貴方のものを、勃たせようとしています」
平然とそう答えると、ビジョンはそのままぐりぐりと踏み付けにし、刺激を与え続けてくる。
「手とか口とか、他にやりようあるだろ……っ」
「でも、貴方のものは硬くなってきましたよ?」
足の甲で、芯を持ち始めてきた熱を見せつけるように押し上げられる。

「あッ」
思わず上擦った声が漏れた。
こんなのはおかしい。明らかに向こうに舐められている。今すぐに本気で怒りを露わにすればビジョンも狼狽えるかもしれないが、粗雑で愛撫とも呼べない動きに何故か快感が伴い、その気を削ぐ。
「これなら、足でしても変わらないじゃないですか」
「はぁッ……、ふざけんなよ、お前……!」
口では歯向かってみせたが、感じている証拠がスウェットのズボンの上からでも分かる程になっている。
「感触的には勃っているんでしょうけど、服を着たままだと分かりづらいですね」
ビジョンは足の指を器用にスウェットのゴムの部分に引っ掛け、下ろそうとしてくる。しかし、上手くいかなかったのか指を外すと、八つ当たりのようにかかとで膨らみを潰してくる。
「ッ……!」
こんなにぞんざいに扱われているというのに、快感として拾ってしまうのが恨めしい。

「人木さん、自分で脱いでもらえませんか?」
「……は?」
「そうしたら、直接してあげますから」
「するって言ったって……」
ビジョンは挑発するように、足の指をくいくいと曲げた。
「十分でしょう?」
「……」

「あ〜〜〜〜〜!!」
「ごめんって!悪かったよ!前回寝落ちした上に、今回はチャチャっと済まそうとしたからって怒ってんだろ!?」
大袈裟に、”降参です”とアピールするように両手を挙げた。
「今からでもいつも通りにするから、それで機嫌直してくれよ」
「……」
ビジョンの方を見やれば、彼は怒るでも笑うでもなく、無表情でこちらを見つめていた。怖い。

「……確かに、今日の人木さんには明らかにぞんざいに扱われているなと思いましたし、意趣返しの意図が無かった訳ではありません」
やはり、足でしてきたのは仕返しだったようだが、自分の言動を思えば当然だった。
「ですが、今までずっと人木さんにリードしてもらってばかりで、受け身の姿勢で居続けた事に対しては反省しているんです」
「え……」
まさか反省という言葉を向こうが出してくるとは思わなかった。良い流れに好転するのではと期待する。

「だから、早く下を全部脱いでもらえますか?」
「え」
俺は、こちらがリードし直すと申し出たのだが。
「今日は、貴方を楽にしてあげますから」
「罪滅ぼしがしたいというなら、大人しく私に従ってください」
目の前のアンドロイドが、人間に対して”従え”と半ば命令をしてきている。AIの反乱とやらは、今まさにここで起きているのではないか。
「ほら、早くしてください」
そうこうしているうちに、目の前のアンドロイドは脱ぐように急かす。
「分かったよ……」
普段スる時と、やる事は変わらないのにとても居た堪れない気持ちになりながら、スウェットのズボンと下着をまとめて脱ぎ去った。
言いなりにはなりたくない気持ちとは裏腹に、自身の性器はゆるく勃ち上がっており、これからの刺激を期待してか、涎を垂らしているように見えるのがまた情けない。
「お利口さんですね」
ビジョンは機嫌良さそうにこちらの様子を眺めていたが、俺の方はペットや子ども相手のようなビジョンの物言いに、反抗的な視線を送る。
そんな事はお構いなしに、ビジョンは脚を伸ばすと、陰茎を腹に押し付けるように踏みつけにしてくる。
「ぐ……っ」
器用にも、カリの部分を何度も足の指でなぞられる。爪が当たって痛くもあるのに、気持ち良さが勝ってしまう。
「うぅ……っ」
先端からだらだらと溢れる先走りを足に纏わせると、親指と人差し指で固定するように挟み込み、そのまま上下に足を動かしてくる。
「あッ……ん……っ」

ビジョンがアンドロイドだからなのか、足だからといって辿々しい動きではなく、的確に快感が下腹部を往復し、水っぽい卑猥な音を立てている。 
「もうローションも要らないですね」
何楽しそうにしてんだコラと睨むが、ビジョンの方は気にも留めずに容赦なく扱いてくる。気がつけば、陰茎は足で押さえ付けられずとも真っ直ぐに天井を向いて屹立しており、羞恥と共に明らかな敗北感にも見舞われる。
「このままだと、本当に足で十分という事になっちゃいますね」
ふふ、と笑いながらもビジョンは容赦なく足で責め続ける。
こちらとしては、いや駄目だろと制する意思もあるにはあるが、早く出したいという考えで頭が埋め尽くされてきて、僅かな理性は頭の片隅に追いやられていく。

足でイかされたとして、気持ち良いものは仕方ないのだから、もういいか。

「あっ……、もう、でる……ッ」
迫り上がって来る射精感に身を任せていると、ビジョンの方は動かしていた足をぴたりと止める。待ち望んでいたはずの快感が、目の前でさっと取り上げられた。

「な、なんで!?」
「挿れるために勃たせてくれって言ったのは、人木さんじゃないですか」
言った。言ったが!
それならイく寸前まで刺激する必要は無いはずだ。
昇り詰めていた感覚は一気に遠ざかるが、吐き出せなかった熱が下半身に溜まり続けており、今すぐに発散したくて堪らない。
「あの、もう挿れたい……」
熱を持て余したまま、縋るようにビジョンに近づけば、彼は俺を制止するように顔の前に掌を突き出す。
「待て、ですよ人木さん」
「はぁ?」
こいつは何を言ってるんだ。
混乱したまま固まる俺の目の前に、ビジョンは先程まで俺のモノを弄んでいた足を差し出す。

「舐めてください」
「は!?」
「汚したの、人木さんなんですから」
いや汚れるような事をしたのはお前だろ、というツッコミは一旦飲み込んだ。

「綺麗にしてくれたら、最後までシてもいいですよ」
ここまで追い立てておきながら、目の前のアンドロイドは残酷に交換条件を突き付けてくる。
「足を舐めるのは、初めてじゃないでしょう?」
「お前なあ……」

本当に嫌ならば、一言”嫌だ”と拒否をすればいい。だけどお前はそうしない。
それをビジョンに見透かされているようで癪だった。
「お前、マジで趣味が悪い」
口では悪態をついたが、了承の意味となっていた。このように追い詰められる状況を、嫌ではないと思ってしまう自分がいる。

観念し、恐る恐る顔を近づけると、足についた液体を舌で掬った。
「舐めてくれるんですね」
にこりと笑うビジョンをじろりと睨みつける。向こうは全く意に介していない様子だ。

作りものであると実感する皮膚の味は、石鹸の香りとは別に独特な苦味がする。飲み込めないほどではないが決して美味くもなく、どちらかと言えば不味い。
しかし、この味を生み出した張本人のため、大人しく舐め取っていくしかなかった。

「んっ……」

足を舐めていれば、ビジョンは呑気に感じているようだった。やらされている身としては腹が立ち、乱雑にしゃぶっては、綺麗にというより涎でべたべたにしていく。
(そもそも、なんでアンドロイドが人間に足を舐めろなんて言う発想になれるんだよ!?俺ですら考えた事もねえよ!)
頭の中で文句を言いながら舐めていると、もはや我慢汁なのか、涎なのか区別もつかなくなってきた。吸っていた指を口から抜くと、「あっ」と一際大きくビジョンは啼く。
「ほら、言う通りにしましたよ」
約束は守れよ、と暗にビジョンを促す。

「……人木さんって、マゾなんですか?」

「はい???」
涎まみれの足を乾かすようにぷらぷらと揺らしながら、ビジョンが呑気に問う。
「前から思ってはいたんですが、今日なんて足でシた時、怒るどころか流されて悦んでいましたし」
「……」
「足を舐めるのも、正直してもらえるとは思っていませんでした」
「だってそれは、お前がやらせたんじゃん!」
「足でシたのは私の意思ですけど、足を舐める事を選んだのはあくまで人木さんの意思ですよ。それに、今回だけの話じゃないです」
「いやでも、交換条件を出されたり、頼まれたから仕方なく……」
「足でされて、悦んだ事は否定しないんですね」
「……」

「虐められると、気持ちよくなっちゃうんですか?」

「〜〜っ!」
「もう、今日は、俺の方からは何もしてやんねえ!」
「動いたりもしねえし、もう舐めたりも無し!これ以上はほんと、なんもしない!!」
自身をぴんと直立させたまま、喚き散らす姿は無様以外の何物でもなかった。これに対し、”なら今日はこれで終わりにしましょう”と返されたら、自分にとってもかなり都合が悪い。だが、混乱した頭は少しでもビジョン相手に優位性を誇示する事だけに躍起になっていた。

「仕方のない人ですね」
ビジョンは、軽くため息をつく。
しかし、困っている様子は全く感じられず、涼しげにこちらを見つめていた。
「”何もしない”をする前に、布団の上に寝転ぶのだけはしてもらえませんか?」
そう言うと、今度はビジョンが俺をベッドに押し倒す。

「寝たかったんでしょう?良かったですね」
ビジョンは仰向けになった俺の身体に跨ると、楽しそうにこちらを見下ろしている。自分より体格の良い男に組み敷かれ、これから何をされるのかという不安よりも、期待を隠せない自分がいる事に、気づきたくなんてなかった。

「自分で言ったんですから、人木さんは何もしちゃ駄目ですよ」
後はもう、彼のなすがままだった。


※書きたかったもの:足コキ。アンドロイドは器用に出来そうだなって。
※ビジョン君による手の指舐めパートも書いたけれど、蛇足だったので泣く泣くカットにしました。
※慣れを書きたかったけど不穏にもなった。最初ぞんざいな扱いをしてすまない。やいのやいの騒いでほしい。
※挿入してないのに何文字書いてるんだ。実際この後どうされるのかは私にも分かっていないので書けない。