【海ビ】※溶ける

SS_蓮根

※触れるの続きでえちなことをしています。

「あの……触ってほしいって言ったのは、そうなんですけど」
「んー?」

人木さんは私の頬をなぞり、耳たぶを両耳でやわやわと揉んでいる。仕掛けたのは私からで、明確に誘ってほしいと伝えたはずだった。口元を優しく緩ませながら、顔を寄せて来る。唇同士が熱を帯びて接触した。

「んむ……」

触れるだけのキスで、刹那に熱は離れていく。口内に溜めていた唾液も、伸ばしかけた舌も行き先を無くした。ソファの上から見上げる人木さんの表情は楽しげで、前戯というには子供騙しのような気がしてしまう。

しかし、上半身を弄る手つきは、明らかに好奇心とは違う、情欲を追う仕草だった。
するりと脇の下を撫でたかと思うと、ゆっくりと胸の方に滑らせる。まだ敏感なところに触れられていないのに、ついついびくりと反応してしまい、羞恥心が点っていく。

「はっ……あっ……」
「意外と柔らかいよね、この辺とかも。人間みたい」

胸筋に当たるパーツの間を指先が行ったりきたりしている。突起の方に触れそうになっては離れていくのでかなりもどかしい。

「人木さん、あの、なんで触ってくれないんですか」
「ビジョンさんはどこを触ってほしいの?」

口笛でも吹き出しそうな弾んだ調子で人木さんはふにふにと軽く胸を揉み込んだ。わかっている癖に聞かないでほしい。

「胸が、良いです」
「胸のどこが良いの?」
「それは……」

人木さんは言いづらいことを引き出してこようとする。ずるい。羞恥を我慢して、この人に強請るしかないのだ。

「ち、乳首ですよ。気持ち良いところ、とっくにわかってるでしょ」
「さあ〜、今日は気分じゃないとかもあるでしょ?」

ようやく、胸の先端に指先が触れ欲しかった快楽が与えられた。両胸の突起を潰すように撫でられ、爪先で弾かれる。それからまたぐりぐりと弄られては、絞るように引っ張られた。

「あっ……!んんっ、あっ、はぁっ……」
「気持ちよさそうだけど、胸って結構感じるもんなの?」
「んっ……ひ、人木さんにも、いつか教えてあげますよ」
「えーと、今はビジョンさんを気持ち良くできれば良いかなー……俺は」

人木さんは気まずそうに目を逸らすが、今度自分が上の時は胸を攻め始めてやると勝手に心に決めた。

もちろん、アンドロイドである自分は“開発“などという行為をする必要はない。ただ感度を設定すれば良いだけだ。とはいえ、人間の性帯感と呼ばれる箇所にはほとんど感度を設定してある。人木さんに直接言ったことはないが、なるべく彼に触れられている時は快楽を感じたい。

そんな浅ましい感情が、機械の癖にあるから。

「はあっ……はあっ……もう、胸以外も触ってくださいよ」

下半身を彼のモノに重ねるように擦り付けると、人木さんの眉がぴくりと動く。ごくりと、人間の聴力では聞こえない微量な周波数で喉が鳴ったのがわかった。人木さんは無言で私の下半身の衣服を剥き、早急な手つきで後ろの秘孔に手を伸ばす。そして、その腕をガッチリと掴んで彼の愛撫を完全に阻止した。

「待ってください」
「んえっ!?」
「胸以外とは言いましたけど、そっちを触っていいなんて一言も言ってませんよ」
「はい……?」

今まさに本番に差し掛かろうというところで止められたせいか、どういうこと?と言わんばかりに、人木さんは半口を開けて固まっている。きっとこれから突飛な要求を受けるとは思っていないだろう。だからこそ、相手の反応が気になる。

「足、舐めてほしいです」
「えっ、今?今!?」

予想通りの動揺が返ってくる。ダメって言われるだろうか、不安半分期待半分だ。気持ち上目遣いで彼を覗き込んで見ると、控え目に返事がもたらされた。

「まあ、良いけどさ……あの、満足したらちゃんと触らしてください……」
「人木さん次第です」

いつ間にか逆転してる……?とぼやきながらも、人木さんは律儀に足の指におそるおそる舌を這わせる。親指の間にちろりと舌先を伸ばし、口元で包むように指先をしゃぶってくる。

「んっ……そのまま。上手ですよ」

本当にこれで良いのかと訴えかけて来た目は、だんだんと興に乗って来たのか足裏にも舌が這い寄る。生温かい感触が何度も巡って、ぞくぞくとした電気信号が伝わった。

「足舐めるのって、正直初めてなんだけど……」
「んっ……ちゃんと、気持ち良いですよ」

人木さんに微笑んで満足感を伝える。反対に人木さんは不貞腐れた様子で雑に指をしゃぶり始めた。乱雑な舌の動きが、センサーを狂わせて悦楽へ変換する。

「はあっ、んっ、あっ……あっ……」

彼の目が、不満げにしていた言葉とは裏腹に恍惚を感じているのをなんとなく知覚する。前々から卑屈そうな視線や言い訳を投げかけながらも、仄かに口角が上がっているのを、彼は自覚しているのだろうか。M気質なのか、人木さんに尋ねたらどうなるのだろう。それはまた次の機会に聞いてみることにする。

「んんっ、ちょっ、人木さんっ……!」

健気なほど足裏を舐めていた舌はいつの間にか、脛までたどり着き、そのまま太ももまで行き来し始めた。私の制止の声を無視して足の付け根に彼は口づけ始める。

「アンドロイドってやっぱり、痕がつかないなあ」
「そ、れはっ、そうですよ。んっ……あっ!」

情事中、人木さんは私に痕をつけようとする癖がある。何度目かも数えるのも恥ずかしい台詞だが、少し寂しそうに口付けた場所を眺める人木さんを見るのが好きだ。

「どこを触っても、毛がないから羨ましいよ」
「あっ……!そこ、は……っ、あぅ……」

人木さんの顔が股間に埋められると、肝心な性器には触れず、ふぐりの周辺を舌で弄び始める。

「っ、待っ……! あっ、はぁ……ぅっ、うぅ……」

予想外の場所を愛でられ、困惑と羞恥でいっぱいになる。さっきまで、自分が優位なはずだったのに。人木さんは機嫌の良い猫の毛繕いみたいに、陰毛のない性器の周りの肌触りを確かめているようだった。

「なっ……んで、そこ……っ!んぅっ……あぁ……っ」

恥ずかしくてたまらないがやめてほしいと言うと人木さんは本当に行為を止めてしまいかねないので口に出せない。ただ堪えるように喘ぐしかなく、もどかしすぎる快楽に悶えるしかない。こんなのあんまりだ。

反り勃った性器からは先走りが溢れ落ち、少しでも愛撫を受けたら達しそうだ。しかし、決定的な刺激は与えられず、絶頂に上り詰めるための手前でずっと、渇きに飢えて溺れているような、熱に浮かされて快楽の幻を見ているような気分になる。

昇りつめたら、どれだけ気持ち良いか。
その先を想像しては、抑えきれない声だけが口から溢れ、唾液に似た口内の潤滑液は口端から溢れ落ちる。

「ねえ、どうしたい。ビジョン」

ぴたりと動きを止めた人木さんが、瞳を優しく細めて残酷な問いかけをする。
この人が望む言葉を言うのが癪だと感情プログラムがバックグラウンドで働きかけても、私の口はまるで処理しきれないバグを引き起こしたかのように、別の言葉を発した。

「ほしいです……人木さんが」

彼の頭を抱き寄せて、胸に包み込む。
恥も弱みもなんでも、この人にならさらけ出せるから。
もっと奥まで、全部に触れて欲しくなってしまう。

「私の奥まで、ちゃんと人木さんのものにしてください」

人木さんは意外と照れくさそうに笑って、私の頭をまるで褒美のようにくしゃりと撫でた。

「思ったより……俺の方が恥ずかしくなったかも」
「人木さんが恥ずかしがってどうするんですか」

微笑ましさに気が抜けた一瞬だったが、人木さんのキスでまた艶やかな時間に引き戻された。期待していた熱が後孔に当てられ、淵から先にゆっくりと入って来る。

あとは、思考全てが溶けていくのを体の内側から感じるだけだった。