【海ビ】※味

SS_蓮根

※ビジョンくんが人木さんにフェをする話

「あの……大丈夫?」
人木さんを喜ばせようと思い、提案したものの初めてのことに戸惑う。
「人木さんのを、こんな間近で見ることがなかったので……」
「まあ……見ないでしょ」
人木さんの下半身と向き合う姿勢で、固まっている私を覗き込む人木さんは不安そうにしている。それもそのはずだ。自身の急所を他人の眼前に晒して落ち着く男性はいないだろう。
私たちは性行為も何回か経験したがいわゆるオーラルセックスは初めてのことだった。
人木さんがこういうこと……をしてもらった経験があるかはわからない。というより、比較されるのが嫌なので聞きたくはない。文字通り”記録”をデリートすれば良いが、“個人“的にはあまりやりたくはない。
「もう、反応してるんですね」
まだスラックスに包まれているそれを、指先で軽く突いてみる。びくりと、布の中で反応したのがわかった。
「う……そりゃ、期待もするよ」
「安心しました、ふふ……」
ふにふにと愛でているとくぐもった声が人木さんから漏れる。
「口で、チャック開けましょうか」
興が乗ったので人木さんを喜ばせるために学習のために見たAVの真似ごとをしてみることにした。
「……はい?」
間抜けな声は聞き流し、口でチャックを挟み込んで降ろす。人木さんの下着の上から、唇で形を確かめるように根元からキスをしていく。
「ん……」
人の性器は繊細だからなるべく唇で愛撫するように心がける。それとも、人木さんは歯を立てられる痛みがある方が好みなのだろうか。
「……ふぅっ……っ」
ふと見上げると人木さんの顔は紅潮しており、声を出すのを堪えているようだった。下着越しでもわかるほど、すでに彼の性器は十分に張りつめている。
「直接、触っても良いですか?」
「……早く、そうしてもらえると」
余裕のなさそうな人木さんに悪戯心が働いて、焦らしてみたくなる。一刻も早く恋人に奉仕する方が、アンドロイドとしても正解だと理解しているはずなのに不思議な感覚だ。
「どうしようかな。まだこうしていたいのですが」
「……ッ!……う」
睾丸持ち上げるように指先で転がすと、人木さんが限界を訴えてくる。もう少し楽しんでいたい気持ちもあるが、人木さんをこれ以上我慢させるのも酷だろう。下着を脱がし熱を解放させると、ペちりと勢いよく人木さんのものが頬に当たり、思わず声が漏れた。
「わっ」
「あっ……ごめん……」
人木さんが謝ってくるが、雰囲気を保ちたいのでそのまま頬で彼のものに擦り寄る。どくどくと脈打つような音が聞こえてくるような錯覚に陥るほど彼のものは熱を持っていて、
「ビジョンさん……!?えっ、続行!?」
「大丈夫です、このまま私にまかせてください」
ペロリと、彼の側面に舌を這わせて何度も下から雁首に向かって舐める。とろりと溢れ出した透明な液体を舌で掬い取り、頂点から吹き出すものを口先ですすると、人木さんは一際呻いた。
「うっ……!」
「きもちいいれすか?」
「気持ち、は、良いけど、っ……!」
舌先で雁首を刺激しながら、口全体で頬張るように人木さんのものを思い切って咥える。
「んむ……」
唇の裏側に歯を包んでゆっくりと上顎に亀頭を擦り付けると、ぬちゅぬちゅと接触した粘液が舌の操作を円滑にするため口内を満たす潤滑液と混ざる振動音を感知する。
「んっ……むぐぅ、んむ……」
「ビジョン……」
人木さんが私の頭に手を乗せ、前髪をかき分ける。彼は人工の毛髪を柔く掴んでは梳いていった。上気した頬に汗が滲んでおり、濡れた瞳で恋しそうに見下ろしてくる。余裕のなさそうな人木さんの顔をもっと見てみたい。好奇心に勝てずに、口内での輸送を意図的に早めると彼の眉間には皺が寄った。
「はあっ……!ビジョン、もう出るから。はな、離して……!」
「んっ……!っ……!?」
どぷりと口内に液体が溢れ出た瞬間、うっかり口を離してしまい白濁が視界に飛び散っていく。
「うわっビジョン!ごめん!本当にごめん!」
顔についた自身の精液を拭おうとする人木さんをポカンと眺めつつ、口元についたそれを指先でペロリと舐めすくった。
「……美味しいです」
人木さんが見ていた”動画データ“にも入っていた演者の仕草みたく笑ってみる。しかし、返ってきたのは予想外の反応だった。
「そ……」
「?」
「そういうことはしなくて良いから!!!!!!!!」
「えっ、えっ」
汚れるのも気にせずワイシャツの袖で勢いよく私の顔を人木さんが拭いていく。
「ふぅ、これでよし」
綺麗になったと人木さんは満足そうにする。かと思えば、そもそも俺が汚したんだった…と落ち込み始めてしまった。どうしたのでしょう。
「ビジョンさん。今度からリップサービスみたいなことはしなくて良いからね……」
「そ、そうですか……?」
ひしっと肩を掴まれ、真剣な表情で人木さんに説得される。良かれと思ってやったことだが、彼の好みではなかったのだろうか。
味覚機能のない私にとっては、たとえ精液だとしても無味な粘性のあるただの液体にしかすぎない。人木さんのものであるなら、どんなものでも独占したいのは機械にとって人間に対する傲慢なのだろうか。
それでも、愛するという感情にもっともっと近づきたい。彼を腕の中で安静な揺籠のごとく抱きしめていたい。
きっと、アンドロイドには必要のない”味”を覚えたのは確かだ。
これから味をしめた私は人木さんに積極的に迫れるようになる。人木さんからなんでそんな小悪魔みたいになっちゃったの、とこぼされるのは別の話だ。