私の恋人、人木さんの観測。
ソファにもたれかかってテレビに釘付けになりながら、お笑い番組にひとしきり笑ったり、CM中はスマホを触って真剣にねこ動画を探していたり、足元を通りかかった心さんの背を撫でても相手にされずため息をついたりしている。
隣で彼の様子を盗み見るだけでも、絶えず表情は感情によって移り変わっていく。
しかし、彼を垣間見するだけが、私の目的ではない。
「人木さん、寝室で私が何をしてても好きにして良いですよ」
自分なりに勇気を出して伝えた言葉だった。
照れ臭さを誤魔化すように人木さんが何かを言う前に口付けをして、「待ってます」と伝えてさっさと寝室に向かった。
※※※
「あのさ、さっきのってどういう意味?」
恋人を誘い待ちに待ったベッドの上で、呑気に言い放たれた言葉がこれだった。
リビングでソファにもたれかかっていた彼にキスをして、寝室で待ってることまでしっかり伝えた完璧な夜のアプローチのはずだった。
「なんのことって、さっきのでわからないですか?」
「何をしてても好きにして良いって、どう言うこと…?」
そんな。
「あの、自分では誘ってたつもりなんですけど」
「……そうだったんだ?」
「気がついてなかったんですか!?」
さっきまで自信満々でいた自分が馬鹿みたいだ。
ため息をつくのをグッと堪えるも、人間であったらめまいの一つでも起きていそうなほどショックだ。人木さんにはなるべく素直な言い回しを自分なりに心がけているつもりだった、こういうタイプの口説き文句も通じないと思わなかった。盛り上げる材料を作ったつもりだった。
「台無しです」
「ごめん、その……俺もシたいな〜とは思ってたよ。俺が先に誘っておけばよかったかな〜……」
歯切れの悪そうな人木さんが、視線を泳がせつつも顔色を窺ってくる。
「いいですよ、もう……私の理想のアプローチが通じなかったことくらい」
「本当にごめん……。えっと、今からシます……?」
項垂れた私の隣に座って、おそるおそる聞いてくる人木さんの顔。そこにあるのは、日常では見られない彼の不安な顔だ。
「……シますよ。こうやってストレートに言うのは恥ずかしいですけど」
「……本当?」
「……っ、シたいです、人木さんと」
はっきり言う恥ずかしさを隠せずそう言うと、人木さんは安心したように笑った。
結局、私はあなたのことを甘やかしすぎているのでしょうか。
背中に腕が回され、惚気た疑問を打ち消すために唇に噛み付くように口付けた。
